民主主義を守るための公文書管理!


今日は!白河清風です。森友・家計問題では政府の公文書の改竄や隠蔽により事実の究明ができずに曖昧のうちに幕が降ろされました。今回の問題を単なる官僚バッシングや政権批判で終わらせるのではなく、民主主義の根幹を揺るがす重大な事件として捉え、再発防止をどうするかについて法律的な観点を中心に考えていきたいと思います。

1.日本の情報公開および公文書管理の現状
   まず最初に、現実の法律の問題点を見ていきたいと思います。

①情報公開法の問題点
   情報公開法は、1999年に成立し、2001年に施行されました。国や地方自治体の行政機関全般と独立行政法人、防衛研究所図書館、外務省外交史料館などの保有文書について、憲法21条で保障されている国民の知る権利に基づき開示請求等を定めた法律です。
   しかしながら、開示請求に対し、行政機関の非開示の裁量が広く認められていることや、非開示になった場合の不服申し立ては情報公開・個人情報保護審査会にできますが、この機関は行政から独立した機関ではないという問題点があります。
   また、費用負担を覚悟して仮に裁判を起こしても、裁判官は非公開文書を見ることが出来ず、裁判を受ける権利も半ば骨抜きになっています。また、開示手数料も量により多大となります。

②公文書管理法(自治体は対象外)の問題点
   公文書管理法は、旧社会保険庁(現日本年金機構)の「消えた年金問題」を受けて2011年に国及び独立行政法人等(地方自治体は対象外)を対象に施行されました。
   国立公文書館がせっかく1971年に設置されてたにもかかわらず、公文書の作成・保存は法律で義務付けられておらず、その管理体制は貧弱そのものでした。公文書管理法の制定が遅れた行政の怠慢の誹りは避けられないと思います。
   同法第1条で公文書の役割について3点を示しています。
ア.行政の適正かつ効率的な運営に資する役割
(業務内容を文書で共有化しておけば、当該案件の担当者間の齟齬を防止できるし、将来の類似案件処理に役立つ)→行政サイドの利便性
イ.現在の国民に対する説明責任を果たす役割
(行政は主権者である国民に対し、その活動が適切であることを説明する義務があるが、そ の義務を果たすためにの重要な証拠資料である文書記録を適切に保管する)→国民に適切に説明する役割
ウ.将来の国民に対する説明責任を果たす役割
(後の世代が現在を振り返る際に、公文書が歴史を知る、つくるための国民共有の知的資源 となる)→歴史公文書としての役割
   情報公開法との関係で、イの役割が強調されています。イの役割を満たす文書は、日本の行政の意思決定方式の特徴がりん議制であることから、公文書とは最終的な決裁文書だけを指すと思われがちです。しかしながら、公文書管理法第4条には「当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程を合理的に跡付けまたは検証することができるよう文章を作成しなければならない」とあり、途中の議論がうかがえる文書を広く含むものと考えられます。
   従って、森友・加計問題で問題となった電子メールも意思決定過程などの検証に必要なものは公文書として扱うべきですが、現状ではルールがないため、行政により文書の恣意的な選別が行われて混乱のうちに真相が不明確に終わったのが今回の一部始終です。
   さらに気になる点は、重要な政策形成に関わる大臣の実質的な議論の記録が日本では疎かになっている点です。閣議の議事録も明治以降記録がなく、2014年以降ようやく作成・公開されるようになりましたが、そこには結論だけが書かれ実質的な議論の過程が見られず、不完全な文書となっています。
   アの行政サイドの利便性の面から見ても、統一的な基準を設定して出来るだけ明文化することが、行政活動上有用であるはずです。
ウの歴史公文書の管理保存も重要です。未来の国民が現在を振り返り、歴史を知りそれを未来に役立てるためのレガシーとしての重要なものです。
   欧米先進国では、作成後30年経った重要公文書を国立公文書館で永久に保存し原則公開する制度が定着しています。しかしながら、日本では、作成後30年経った公文書は公文書館への移管を検討することになっていますが、移管は義務でなく事実上各省庁(外務省は30年ルール遵守)が自らの判断で廃棄できることになっており、残念ながら実効性が確保されていない法律となっています。

2.今後の改善へ向けて
   改ざんされた公文書情報が国会に提出されること自体、もはや民主主義ではないと言わざるを得ません。そのため、与野党関係なく議員が政府を追及するのは当然のことですが、国会では野党の対応(適正な政府答弁がないことに対する野党の出席拒否による抗議、その結果、他の重要法案の審議が遅れるなど)に批判が集まったのは残念です。今後については、国会論戦だけでなく、違反時の罰則を含め政府側適切に情報開示や情報の保管を求める法律に変えていかなければなりません。

①情報公開法
   このように情報公開に対し不十分な法律ですが、制定以来、一度も本格的な改善が図られていないのが驚きです。さらに、2013年に特定秘密保護法が成立し、情報公開の環境が逆行してしまったと感じざるを得ません。
   情報公開のルールの曖昧さ、民主主義を無視するかのような恣意的な制度運用を一刻も早い時期に是正すべく、法律改正をする必要があります。
   まず第一に、行政側の裁量権を限定し、開示請求に応じない場合の条件を法律で明示することです。そして、非開示する場合の理由を開示請求者に開示するように改正すべきです。そうすることにより、不服申し立てや裁判で争う場合の論点を絞ることが可能となります。
   また、国民の知る権利は民主主義の根幹をなす重要な権利であることに鑑み、不服申し立てのために第三者機関を設ける必要があると思います。
   裁判に訴える場合も、現状では行政が非開示とした文書を裁判官も閲覧することができませんが、これでは実質的な判断ができないことになるので、当然のことですが、裁判官も閲覧できるように改めるべきです。現状ではあまりにも行政側に権限が委ねられすぎています。

②公文書管理法
   まず最初に、何を保存対象とする公文書とするかを規定しなくてはなりません。決裁文書には結論だけでなく、結論に至った経緯や理由をはっきりと書く必要があります。経緯を説明するために必要な職員のメモやE-mailも対象とし、詳細な基準づくりをする必要があります。
   16年のアメリカ大統領選挙の際のヒラリー・クリントン国務長官が公務のメールの受送信する際に私用のメールアカウントを利用していたことが大問題となりましたが、これは、アメリカでは連邦記録法により、公務で受送信するメールも原則全て政府に記録されることになっているからです。そのため、個人アカウントで公務を行っう職員はCCに公用アカウントを入れるか20日以内に公用アカウントに転送することが義務付けられており、違反者は懲戒対象となるという厳しい規定が設けられています。行政の意思決定に対するプロセスを詳細に記録し、現代および将来に渡っての国民に対する説明責任を果たすという重大な使命感が公文書制度に浸透しているのが理解できます。
   公文書の改ざん防止の点から見ると公文書の電子化が有効です。電子化することにより、後々の文書内容の改ざん、バックデートでの文書作成、文書の恣意的な廃棄ができなくなり、信頼すべき文書の保管体制を構築できるます。
   90年代のアメリカでは、民主主義を推進するためには、お金をかけてでも文化財をデジタル化すべきだとの考えでデジタル化が進められました。そうすることにより、地理的距離によらず誰もが貴重な文化に公平にアクセスでき、民主主義が達成できるのだという考え方です。
   日本は世界から見ると2周遅れくらいですが、デジタル・ガバメント閣僚会議がもたれ、電子政府化をようやく進め始めました。文書管理の効率化を含め、文書の電子化の推進を規定することが重要であると思います。
   日本は比較的早い時期(1971年)に国立公文書館を設立しましたが、いまだに、どのような文書をいつ国立公文書管理に収納するか等の詳細は何も法律で義務化されておらず、各省庁のまちまちな判断のもとで収納(ほとんどは廃棄)されているのが実態です。
   欧米先進諸国では作成後30年経った重要公文書を国立公文書館に永久保存し、原則公開するという「30年ルール」が定着しています。作成直後に公開するのは様々な支障があるが、一世代が経過すると問題も少なくなるという考え方です。日本も早急に30年ルールを採用して民主主義に資するべきと考えます。
   30年ルールが採用されると、次に問題となるのが国立公文書館のリソースです。アメリカの国立公文書館の職員数(3112人)、所蔵量(1400キロメートル)←書架延長、イギリスの職員数(600人)、所蔵量(200キロメートル)、韓国の職員数(471人)、所蔵量(367キロメートル)などに対し、日本は職員数(188人)、所蔵量(64キロメートル)とかなり貧弱であり、今後の増強が必要です(26年を目処に新館建設が決まりましたが)。
   政府は財務省の決裁文書改ざんや自衛隊の日報隠しなどの不祥事を受けて、18年7月に各省庁での監視体制の強化し、文書の管理状況を職員の人事評価に反映し、悪質な行為には免職を含む処分を打ち出しましたが、まず基本となる法律の不備を正すのが急がれると思います。

③自治体の公文書管理(公文書管理条例の制定の動き)
   情報公開法は、地方自治体にも適用されますが、公文書管理法は地方自治体を対象外としています。ただし、努力目標として「適正な施策を取ることを求める」ことが記載されており(第34条)、ここでは、地方自治体の状況を見てみたいと思います。
   まず、加計学園問題で物議を醸した愛媛県の状況ですが、18年10月に公文書管理条例が施行されました。
   政治問題化した愛媛県今治市の学校法人加計学園による獣医学部設置をめぐって、官邸で当時の首相秘書が「首相案件」と発言したと記した県職員のメモが見つかり、秘書官が面会自体を当初否定するなど、県に残る文書の記録としての正当性が物議を醸しました。
   これをきっかけとして、当時の中村知事がその後半年足らずで条例の制定・施行にこぎつけました。条例は「事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない」と規定し、職員個人の「備忘録」も、重要な事項が含まれている場合には起案文書に書き込むなどして残すし、意思決定の経緯や過程を後から検証できるようにすると説明しています。そして、ガイドラインで何が公文書に当たるかも例示しました。
   11年10月に制定済みの鳥取県は、公文書の保存期間の判断をより明確にするガイドラインを定め、重要なもの(条例の制定、改定・廃止など)は30年、その他(職員給与関係など)は5年と定め、国の一歩も二歩も先を行く内容を織り込みました。
   18年度ではこの件に関し、条例を制定した又は検討中の都道府県は10に上っています。市区町村で見ると埼玉県久喜市や熊本県宇土市など12自治体にとどまっています。(全体の0.7%)

④国等の行政文書以外の公文書の管理
   日本では行政文書の保存・公開の体制については曲がりなりにも議論を重ねて進められてきましたが、立法文書については蚊帳の外に置かれてきました。
  国権の最高機関であり、言論の府である国会関係の各種文書は行政に先駆けて公開されるべきもですが、ずっとおざなりにされてきた経緯にあります。
   イギリスでは国立公文書館とは別に議会公文書館が国会議事堂内に設置されていますが、日本の国会関係資料は議事録を除けば歴史的資料のごく一部が衆議院憲政記念館とは参議院議会史料室で公開されるだけで、今後早急に体制を整えるべきであると思います。
   政党は私的団体であることから、その文書は通常公文書には含まれませんが、政党が立法・行政に不可欠の公的存在であること、立法事務費や政党助成金など多額の公費が投入されているいることを鑑みると政党の内部情報にほとんどアクセスできない状況は早急に改善されるべきです。

3.終わりに
   森友・家計問題の政府に対する追及も行政当局に逃げ切られ、曖昧なまま幕を引かれた感が否めません。与党の圧倒的な数に支えられた政権に対し、数で大きく劣る野党が追及しきれなかったという物理的な側面が余韻を引いていますが、本質的なところは、行政を監視する立場にある国会の武器が依然として貧弱であったということではないかと思います。
   行政の怠慢、不正、不作為などに対し、声高に行政を糾弾し、是正を叫ぶことは非常に重大で、そのことについては野党も今回十分戦っていたことは認めたいと思います。
   しかしながら、最終的に核心に踏み込めなかったのは、政権に対する追及の武器となる法律面の弱さにあったのかなと思います。立法府にいる議員は常日頃から、民主主義を守るために政府を追及するための武器となる法律を磨く不断の努力をすべきであり、そのことが、権力への牽制への近道でもあると感じる次第です

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